1.機械学習を活用する流体解析を理解するための基礎
(1).微分方程式を解く代表的な数値流体解析手法
a.流体運動の記述と注目する時空間スケール
b.ラグランジュ視点とオイラー視点
c.流体運動の「並進+回転+伸縮」への分解
d.質量・運動量・エネルギーの保存則とナビエ・ストークス方程式
(2).ニューラルネットワークの計算に適した格子ガス法流体解析
a.2次元格子ガス法計算モデル
b.応力テンソルの等方性確保
c.3次元格子ガス法計算モデル
d.残されたガリレイ不変性
(3).階層型ニューラルネットワークによるAI学習の基礎
a.従来のAI=ファジィ制御・ニューラルネット・遺伝的アルゴリズム など
b.パーセプトロンの学習原理
c.多層パーセプトロンの誤差逆伝搬法による学習
d.オートエンコーダーの発想と深層学習への展開
2.ものづくりにおける流体解析を困難にする数値流体力学の4大課題
(1).マルチスケール解析
・解像度の桁数と必要な記憶容量・計算時間のトレードオフ
(2).マルチフィジックス解析
・複数の物理現象との連成解析の実践と計算時間のトレードオフ
(3).リアルワールド解析
・数値解析に必要な初期条件や境界条件の実測補正と計算時間のトレードオフ
(4).低消費電力での数値解析
・大規模な数値シミュレーションとプロセッサやメモリにおける電力消費のトレードオフ
3.4大課題の解決によるAIサロゲートモデル実用化への取り組み
(1).ビット演算による高度な並列計算を実現して計算速度を向上する手法
a.ナビエ・ストークス方程式を高精度に近似できる「格子ガス法モデル」の採用
b.格子ガス法モデルのパラメータ調整で現実の流体挙動に近似
c.全体の計算精度を保ちつつ計算量を削減できる「マルチグリッド計算法」の採用
(2).異なる物理現象ごとに異なる方程式を解く計算から脱却する手法
a.共通した概念である「運動量」と「エネルギー」に着目
b.異なる物理現象のシミュレーションを同じ計算手順で実行
c.流体-構造連成解析への適用についても検討
(3).計測値を瞬時に反映する「リアルタイムデータ同化」を実現する手法
a.より信頼性の高い結果を得ることが可能な「計測融合シミュレーション」の採用
b.ニューラルネットワークの学習によって実測値のないデータをカバー
c.リカレントニューラルネットワークによるリアルタイム学習の実現
(4).コンピュータのプロセッサとメモリによる消費電力を低減する手法
a.消費電力の大きい実数演算回路の使用を削減
b.低消費電力で動作が可能なビット演算やシフト演算を利用
c.次世代デバイスとして期待される「スピン演算回路」の利用も将来可能
4.ビット演算型AIサロゲートモデルに期待される応用分野
(1).ビット演算型AIサロゲートモデルを使用するメリット
a.大規模なシミュレーションも少ないメモリで高速に省エネ実行できる
b.格子ガス法モデルに対応するニューラルネットの採用でAI機能を物理的に説明できる
(2).広範な分野への応用
a.地球温暖化、異常気象、自然災害などの自然科学分野
b.原子力、火力などのエネルギーシステム分野
c.航空機、自動車などのモビリティ分野
d.循環器系手術などの高度な医療分野
e.第一原理計算的視点でモデル化する基礎科学分野
5.まとめ
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