実用モータドライブ制御系設計とその実際

価格 ¥ 74,800

■価格

74,800円(本体:68,000円)

■体裁

B5判 上製本  376頁

■発刊

2006年2月

■ご案内

 モータが発明されてから二百年弱の時が経過し、いまや人間社会のあらゆるところでモータが使われています。
 モータ制御は、モータの使用目的にふさわしい動作をモータにさせることであり、高機能を実現することが第一の目標です。モータ制御には、「省エネルギー化」というもう一つ重要な意義があります。モータでの省エネルギーは、モータを常に必要とされるトルク(回転力)や回転数(回転速度)で過不足なく運転すれば達成できるため、モータの制御は必須の技術であります。
 現在では、強力な永久磁石が広く使えるようになって、小形高トルクのモータが低コストで使えるようになっています。変換器においては、半導体素子の発展、回路構成・制御技術の進歩により、小型化,高効率化が進み、モータの適用対象の範囲が格段に広くなってきています.この技術進歩にともない,モータの使用個数も爆発的に増加し始めており、これまでモータとは無縁であったメーカやインバータなどパワーエレクトロニクス技術を必要としなかったメーカでも、モータドライブ制御技術なしでは新規製品開発に支障を来す技術・製品状況になりつつあります。
 本書は、上記の技術情勢に鑑み、今後一層重要となるモータ制御に関連する現状技術をまとめたものです。本書の編纂に当たっては、「確立された技術」「現場技術者にすぐに役立つ技術」「モータドライブ制御のベースとなる技術」を中心にすえ、これらに「最先端の研究・開発技術」を適宜補足した内容としました。
 本書の構成と各章の狙いは以下の通りです。
 第1章では、「主要なモータ適用製品分野の現在の開発動向」を、第2章では、「モータドライブシステムの基本構成とその要素技術の分類」について、第3、4章では、「電力用半導体素子およびそれらを用いた電力変換器の回路構成と制御方式」を紹介し、第5,6,7章では,「現在および今後の可変速モータの主流である,DCサーボ/ブラシレスDCモータ,誘導モータ,永久磁石モータの基本と制御方法」について、第8,9章では「モータドライブ制御に限定特化した自動制御理論と、その解析・設計への具体的適用方法」を説明してあります。第10章では、「第9章の内容に立脚し、さらに発展させたモータドライブ制御系の設計例」を示し、第11章では、「モータドライブ制御システムに用いられる各種センサ」について詳述してあります.本書が読者の皆様の喫緊の業務と今後の製品開発に役立つものと確信し、ご案内いたします。

■執筆者

監 修 内藤 治夫  岐阜大学(前:(株)東芝)
     細田 博美  東芝三菱電機産業システム(株)
     金子  靖  三菱電機(株)
     安江 正徳  三菱電機(株)
     土本 直秀  三菱電機(株)
     小尾 秀夫  三菱電機(株)
     岩路 善尚  (株)日立製作所
     高田 育紀  三菱電機(株)
     石川 祐記  岐阜大学
     大森 洋一  東洋電機製造(株)
     黒澤 良一  東芝三菱電機産業システム(株)
     工藤 俊明  (株)東芝

■目 次

第1章 モータ可変速ドライブの技術動向
 1.1 モータ制御・パワーエレクトロニクス技術発展の経緯と現状
 1.2 鉄鋼圧延
  1.2.1 直流ドライブから交流ドライブへ
  1.2.2 交流ドライブ化のメリット
  1.2.3 主機駆動用交流ドライブの変遷
  1.2.4 最近のドライブ主機用装置
  1.2.5 圧延主機の交流電動機化留意点
  1.2.6 鉄鋼業におけるドライブ装置の今後
 1.3 電気鉄道
  1.3.1 鉄道における使用環境の特徴
  1.3.2 鉄道車両駆動用モータ
  1.3.3 インバータ方式
  1.3.4 制御回路構成
  1.3.5 周辺回路部品
 1.4 昇降機
  1.4.1 エレベータの駆動方式
  1.4.2 モータ制御方式の変遷
  1.4.3 VVVF制御
  1.4.4 振動抑制技術
  1.4.5 機械室レスエレベータ
  1.4.6 回生電力蓄電システム
  1.4.7 大容量化への対応
 1.5 工作機械
  1.5.1 高速主軸
  1.5.2 IPM主軸モータ
  1.5.3 高速・高効率ビルトイン主軸モータ
  1.5.4 非接触主軸受
  1.5.5 最適励磁制御による発熱低減
  1.5.6 高速・高精度送り
  1.5.7 高速・高精度加工のた
 1.6 一般産業用ドライブ
  1.6.1 ファン,ポンプ(2乗低減トルク特性)用途インバータ
  1.6.2 搬送機(定トルク特性)用途インバータ
  1.6.3 その他最新技術
 1.7 家庭電気製品
  1.7.1 概要
  1.7.2 白物家電におけるモータ制御技術
  1.7.3 製品毎の制御技術
  1.7.4 情報機器におけるモータ制御技術
  1.7.5 まとめ
第2章 モータ可変速ドライブシステムの基本構成
 2.1 基本構成
 2.2 電力変換器
 2.3 モータ
 2.4 機械系の定式化
  2.4.1 モータ制御系モデル化の基本的考え方
  2.4.2 機械系のモデル化
第3章 電力用半導体素子
 3.1 電力用半導体素子の動作
 3.2 半導体の特徴
  3.2.1 正孔と自由電子
  3.2.2 p形半導体とn形半導体
  3.2.3 不純物濃度が異なる領域間の電位障壁
 3.3 電力用半導体素子に共通する特性
  3.3.1 オフ状態の電圧保持能力(静的な耐圧)
  3.3.2 通電能力
  3.3.3 電流制御能力
  3.3.4 安全動作領域(Safe Operating Area)
  3.3.5 電力用半導体素子の系統図
 3.4 主要電力用半導体素子
  3.4.1 MOSFET(Metal Oxide Semiconductor FET)
  3.4.2 トランジスタ
  3.4.3 ダイオード
  3.4.4 サイリスタ,GTO,GCT
  3.4.5 静電誘導サイリスタ(SIThy)
  3.4.6 IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)
  3.4.7 IPM(Intelligent Power Module)
  3.4.8 非主流電力用半導体素子
  3.4.9 新材料(SiC,GaN)半導体素子
第4章 モータ制御用電力変換回路の基礎と応用
 4.1 用途に適したモータと電力変換回路の組み合わせ
 4.2 各種電力変換回路の主回路構成と動作原理
  4.2.1 電圧形変換回路と電流形変換回路
  4.2.2 電力変換回路の基本的な考え方
  4.2.3 電圧形変換回路
  4.2.4 電流形変換回
  4.2.5 電流形と電圧形を組み合わせた電力変換回路
 4.3 制御信号の作り方
  4.3.1 パルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)制御
  4.3.2 パルス振幅変調(Pulse Amplitude Modulation:PAM)制御
  4.3.3 パルス密度変調(Pulse Density Modulation:PDM)制御
 4.4 電力変換回路の実情
  4.4.1 スイッチング素子の実情
  4.4.2 制御信号の実情
  4.4.3 各種変換回路の実例
 4.5 まとめ
第5章 DCモータおよびブラシレスDCモータのドライブ技術
 5.1 DCモータドライブ
  5.1.1 DCモータドライブの基本構成
  5.1.2 電流制御の原理
  5.1.3 速度制御,ならびに上位系制御の構成
 5.2 ブラシレスDCモータドライブ
  5.2.1 「永久磁石同期モータ」と「ブラシレスDCモータ」
  5.2.2 120°通電方式の原理
  5.2.3 電圧制御方法
  5.2.4 位置センサレス120°通電方式
 5.3 ブラシレスDCモータの簡易的な正弦波ドライブ
  5.3.1 擬似正弦波駆動
  5.3.2 ホールICを用いた正弦波駆動
第6章 誘導モータドライブ技術
 6.1 構造と原理
 6.2 電圧方程式
  6.2.1 静止座標系
  6.2.2 回転座標系
  6.2.3 2次鎖交磁束
  6.2.4 鉄損の考慮
 6.3 従来の制御法
  6.3.1 V/f 制御
  6.3.2 すべり周波数制御
 6.4 ベクトル制御
  6.4.1 間接形ベクトル制御
  6.4.2 直接形ベクトル制御
  6.4.3 直接トルク制御
 6.5 速度センサレスベクトル制御
  6.5.1 電圧制御に基づく方式
  6.5.2 電流制御に基づく方式4
  6.5.3 直接速度演算方式
  6.5.4 モデル規範適応システム応用方式
 6.6 鉄損の影響と補正
 6.7 高効率運転と電圧飽和回避
  6.7.1 高効率運転
  6.7.2 電圧飽和回避
  6.7.3 相互インダクタンス変動補正
 6.8 電流制御技術
 6.9 電流電圧検出技術
  6.9.1 電流検出技術
  6.9.2 電圧検出技術
 6.10 始動技術
  6.10.1 ゼロ電圧モード
  6.10.2 ゼロ電流モード
  6.10.3 予備励磁モード
 6.11 定数ロバスト化
  6.11.1 間接形ベクトル制御の同定
  6.11.2 速度センサレスベクトル制御での同定
  6.11.3 速度センサレスベクトル制御での同定
 6.12 自動計測
  6.12.1 直流試験
  6.12.2 単相試験
  6.12.3 回転試験
  6.12.4 R抹 試験
第7章 永久磁石同期モータドライブ技術
 7.1 構造と原理1
 7.2 電圧方程式
  7.2.1 回転子に同期した回転座標系
  7.2.2 任意の回転座標系
  7.2.3 静止座標
 7.3 ベクトル制御
 7.4 高効率運転
 7.5 位置速度センサレス制御
  7.5.1 ベクトル制御ベース
  7.5.2 V/f 制御ベース
  7.5.3 電圧制御に基づく方式
 7.6 始動
  7.6.1 引き込みと同期駆動
  7.6.2 停止位置推定
  7.6.3 回転中の始動
 7.7 磁気飽和対応
 7.8 自動計測
  7.8.1 直流試験
  7.8.2 d 軸測定試験
  7.8.3 パルス試験
  7.8.4 回転試験
 7.9 脱調検知
  7.9.1 トルク誤差による方法
  7.9.2 磁束位相差による方法
第8章 モータ制御に必須の自動制御理論
 8.1 制御系の表現:ブロック図
 8.2 フィードバック制御
 8.3 フィードバック制御の欠点
 8.4 モデル化
  8.4.1 線形化
  8.4.2 ラプラス変換
  8.4.3 伝達関数
  8.4.4 ラプラス逆変換
 8.5 伝達関数の合成
  8.5.1 縦続接続
  8.5.2 並列接続
  8.5.3 フィードバック接続
  8.5.4 単一フィードバック接続
 8.6 フィードバック制御系の安定性
  8.6.1 安定性の定義:定性的考察
  8.6.2 数学的安定判別法
 8.7 周波数応答
 8.8 ボード線図
  8.8.1 ボード線図の作図法
 8.9 制御系の基本要素のボード線図とその特徴
  8.9.1 比例要素
  8.9.2 積分要素
  8.9.3 微分要素
  8.9.4 1次遅れ要素
  8.9.5 1次進み要素
  8.9.6 2次遅れ要素
 8.10 ボード線図の合成
 8.11 ゲイン―周波数線図の折れ線近似
  8.11.1 折れ線近似
  8.11.2 折れ線近似の合成
  8.11.3 比例積分要素
 8.12 ゲイン特性の傾斜と位相角の関係
 8.13 ボード線図による安定判別と安定性指標
 8.14 制御系の時間応答と評価法
  8.14.1 ステップ応答
  8.14.2 時間応答の評価指標
  8.14.3 1次遅れ系のステップ応答
  8.14.4 2次系のステップ応答
  8.14.5 2次系の周波数応答
 8.15 定常偏差
第9章 デジタル制御
 9.1 サンプリングと量子化
 9.2 量子化誤差
 9.3 デジタル系の解析手法
  9.3.1 時間進め演算子 z,時間遅延演算子 z
  9.3.2 モータ制御系に必要なZ変換
 9.4 差分方程式
  9.4.1 ホールドの定式化
  9.4.2 伝達関数(ラプラス変換)から差分方程式への変換法
  9.4.2 微分から差分方程式への変換
  9.4.3 積分から差分方程式への変換
 9.5 デジタル補償器
  9.5.1 PI補償器
  9.5.2 位相遅れ・進み補償器
第10章 モータ可変速ドライブ制御系の設計法
 10.1 モータの伝達関数モデルとトルク・磁束の制御法
  10.1.1 直流電動機のブロック図と磁束・トルクの制御法
  10.1.2 誘導電動機のブロック図
  10.1.3 誘導電動機の磁束・トルク制御法
  10.1.4 永久磁石同期電動機のブロック図
  10.1.5 同期電動機のブロック図
  10.1.6 同期電動機の磁束・トルク制御法5
 10.2 モータ可変速ドライブ制御の基本
  10.2.1 多重ループによる制御
  10.2.2 界磁弱め制御
  10.2.3 交流モータ制御の基本構成
 10.3 電流制御系の設計法
  10.3.1 直流電流制御
  10.3.2 交流電流制御
 10.4 速度制御系の設計法
  10.4.1 PI制御
  10.4.2 前置フィルタ+PI制御
  10.4.3 I-P制御
  10.4.4 PI制御+フィードバック補償
  10.4.5 電流制御と速度制御の応答の関係
 10.5 軸ねじれ振動抑制
  10.5.1 軸ねじれ振動
  10.5.2 機械系のモデル化
  10.5.3 シミュレータ追従制御(SFC)
  10.5.4 適用例
第11章 制御用素子,センサ
 11.1 信号処理用ICと使用例
  11.1.1 アナログ回路
  11.1.2 ロジック回路とデジタル回路
 11.2 アナログとデジタルの信号変換
  11.2.1 デジタル/アナログ変換
  11.2.2 アナログ/デジタル変換
 11.3 デジタルモータコントローラ
  11.3.1 マイコンとDSP
  11.3.2 ASIC
  11.3.3 パワエレプロセッサ
 11.4 センサ
  11.4.1 信号の絶縁と絶縁機器
  11.4.2 ロータリエンコーダ
  11.4.3 レゾルバ
  11.4.4 速度センサ
  11.4.5 電流センサ
  11.4.6 その他のセンサ